地図とナビ

クルマのナビを使い始めて10年。すっかり紙の地図を使わなくなった。
地図は大事だ。知らない場所で迷わないために、というより、"走って楽しそう"、"景色が良さそう"な道を探し出すためだ。"国道"に頼るドライブはほんとつまらないと思う。いまや日本のどんな国道を走っても、画一的な景色にしか巡りえない。
でも日本には景色のいい道がごまんとある。ちょっと街道を外れるだけで昔ながらの景色が広がる。それを探し出すために地図を見て想像力をかきたてるのだ。
ハズレもあるが、いい道もたくさん発見出来てきた。

ナビを手に入れても役割は一緒だった。
画面には"現在地"が常に表示されているから、近くのステキロードを探し出すのは紙の地図より簡単だった。
いつのまにか、クルマから"地図"が消えていた。
便利になったと思ってた。

 

ＧＷ最後の2日、急遽決めた久しぶりのドライブに使った地図は、ディーラーでタダで貰った『東京都詳細地図』のおまけ扱いな荒い『広域図』だった。
最近手に入れたこのクルマにはナビがついてなかったからだ。
付けよう付けようと思って、実現できてない。

ナビ以前を思い出し、ハンドルとシフトレバーと地図を両手でうまく操る。
荒くても地図は地図。細すぎる道は載ってないけど、田舎では十分だ。
そして結果も上々だった。
何度も来たことある場所だったのに、『オレの道100選』に入っちゃうようなステキロードをいっぱい走り抜けられた。

こんなに荒い地図なのに、ナビを使ってた時より結果が良いような。
イマジネーションが湧くのだ。
なんでだ？
"紙"と"画面"の違い？一覧性？単にこの日天気が良くてオープン日和だったから？
何が違う？何かが違う。
　
ドライブ中、ずーっと考えてた。

あ！そうか。
ナビになくて紙の地図にあるもの。

『等高線』

なるほどな。
地形のなだらかさ、急峻さ。開けている、閉じている。
アップダウンを繰り返す道。
急な坂を上ったあとに現れる高原のような地形。
夕日が見えるだろう西に開けた丘。

等高線のある地図を見てたときは、直感的に感じとっていた。
その道がドラマチックかどうか。
そして今もそうやって道を決めたばかりじゃないか。

ナビを使ってきた10年。
そんなことも気付いてなかったなんて。
たしかにあののっぺりとした地図は想像力を掻き立てられない。
そもそもナビでいい道を探そうなんてしてなかったのかも。渋滞情報見て、裏道やショートカットばかり探してた？
どれだけのいい景色との巡り合いの機会を失ってきたのか。
ああ"地図"復活だ。

　

ん？でナビはいらないのかって？
そんなことは言ってないさ(^^)